地域に根差す“町の薬局”表町薬局の更なる活動
千葉県佐倉市 表町薬局
“地域密着”の取組みは多くの薬局が目指すところではあるが、それを実現するのは決して容易なことではない。特にその地域で一からスタートした店舗であれば、生活者に対する認知や地域との関わり合いなど、時間をかけて培っていかなければ信頼関係は獲得できない。千葉県佐倉市の『表町薬局』は、まさにそうした地元との関わりを大切にしており、介護や福祉と連携した地域単位での活動などにも積極的に取り組んでいる。地域に根差した“町の薬局”としての存在感や利便性発揮に意欲を燃やす姿は、かかりつけ薬局・薬剤師が求められる今の時代にマッチする。
多職種連携で介護・福祉の取組みにも注力
“町の薬局”としての利便性を追求千葉県佐倉市・JR佐倉駅から徒歩5分ほどの位置に構える「表町薬局」が開局したのは1999年。当初は主な処方箋元が小児科だったことから店舗外観に動物のイラストなどをあしらい、店内にもキッズスペースを設けるなど、子どもへの対応を強化していたという。その後、複数回にわたって店内・外観の改装を行い、漢方・オリジナルサプリメント・介護相談を前面に押し出した現在の姿へと舵を切った。そのような変化の経緯として代表の安田浩文氏は、「当薬局に対するニーズが何かを模索し続けた約20年間で、試行錯誤の連続でした」と振り返り、地域との関わり合いを深めながら“町の薬局”としての在り方や利便性の追求に方向性が定まっていったことを説明する。
そうした中で、同薬局が力を注いで取組んでいたのが、幅広い活動で地域の健康づくりを応援する『カラダ元気教室』だ。特に介護に関しては多職種連携による活動にも積極的で、具体的には認知症や脳卒中に関することを寸劇形式で生活者に啓発したり、介護ヘルパー向けに講演を行ったりと、地域の医療・介護・福祉が一丸となって、生活者が最期まで地元で暮らせるような支援体制の構築に取り組んでいる。
「できるだけ要支援、あるいは要介護1~2で留められるようサポートしていきたい」と語る安田氏の言葉の背景にあるのは、これまでの介護の現場や啓発活動を行う中で感じた“歩く”ということの大切さだ。「自分で歩けなくなるとこれまで一人でできていたこともできなくなり、その結果として尊厳を失うことにもつながっていく」との認識で、そのため同薬局では杖を取り扱ったり安田氏自身も福祉用具専門相談員の資格を取得したりと、“歩く”ことを一つのテーマとして、そのサポートに力を注いでいる。
これまでの取組みや思いを集約した新店舗開設へ
食養生も同薬局が積極的に行っている取組みの一つだ。食事・栄養に関する相談対応のほか、処方箋応需の際も食生活の改善により薬が効きやすい体づくりにつながることを説明するなど幅広く食の大切さを啓発している。また、定期的に食事や栄養に関する情報誌として『楽食』を発行・配布しているほか、小学校の保護者や教師、病院管理栄養士を対象に食養生に関するセミナーを行うなど、食の面でも地域の健康サポートに貢献している様子が窺える。
「薬局は日常の中にある唯一の医療機関と言え、だからこそ生活者と病院、地域の包括支援センター、訪問看護ステーションなどをつなぐハブとしての役割が重要になる」と話す安田氏は、そうした思いやこれまでの取組みを一つに集約した薬局として、このほど同じ佐倉市内に新店舗を開局する。「これまでの薬局運営などの経験を踏まえ、やりたいことをまとめた店舗」と意気込みは強く、新店舗では広いスペースを活用して近隣の包括支援センターと合同での店内イベントなども想定しているという。また薬局内に案内係を配置し、従来の薬局以上に生活者とコミュニケーションが図れるよう工夫するなど、地域の人が気軽に集まれるコミュニティの場としての薬局の活用も見据えている。
一般的に、門前薬局も利用者にとっては便利と言えるかもしれないが、同薬局が目指すのはあくまで“町の薬局として利便性”であり、新店舗の近隣には医療機関ではなく包括支援センターがあるということからも、そうした思いが感じられる。「生活者の『最期まで地元にいたい』という願いを応援できる薬局にしていきたい」と、安田氏はより一層の地域に根ざした取組みに意欲を示しており、そうした言葉からも同薬局の更なる活動の広がりに期待がもてる。(緒方)
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